2010年12月18日土曜日

「ドント・アスク、ドント・テル」撤回

1993年クリントン政権下、軍隊内での同性愛行為を禁じると同時に、兵士が同性愛者であることをみずから公表しない限りは、軍当局は兵士の性的指向を捜査しないことを定めた、通称「ドント・アスク、ドント・テル」法(『現代アメリカのキーワード 』にエントリーがありますので参考にしてください)は、政府による同性愛者に対する差別であるとして、長いあいだ抗議が続けられてきましたが、今日、この方針を撤回する法案が、連邦上院で65対31で可決されました。これは、同性愛者の活動家たちにとってきわめて大きな第一歩で、軍隊における人種差別や隔離を廃止したのと同等の意義があるという人たちもいます。「ドント・アスク、ドント・テル」撤回運動のリーダーとなってきたコネティカットの上院議員ジョセフ・リーバーマン氏は、他の分野での保守的政策によりこれまで民主党左派からはさまざまな批判にあってきたものの、この撤回を実現に導いたことでおおいに名誉挽回となりました。

「ドント・アスク、ドント・テル」撤回を支持する議員たちは、命をかけてまで国に奉仕しようと志願する人たちに、自分たちのアイデンティティについて嘘をつくことを強いたり、性的指向を理由に除隊させたりする(「ドント・アスク、ドント・テル」法の下で、実際に14000人の兵士が性的指向を理由に除隊となったと言われています)ことは、同性愛者に対する差別であるばかりでなく、軍の精神に反するものであり、また、重要な人材を無駄にすることで軍事力低下にもつながっていると主張してきました。さらに、性的指向と部隊の有効性は無関係であるばかりか、兵士の何人かが同性愛者であるということを他の兵士たちが了承している部隊のほうが、そうでない部隊よりも結束が強く実績も高いという調査もあるくらいで、国防長官ゲイツ氏をはじめ、軍の指導者たちの多くも、「ドント・アスク、ドント・テル」撤回を支持してきました。それに対し、元大統領候補のジョン・マケイン氏を含む、撤回に反対する議員たちは、撤回によって部隊の結束が揺らぎ、戦場における効果的な軍事力の動員を低下させ、また、一部の市民が軍に志願するのを妨げる要因となり、現在米軍が戦争に携わっている状況のなかで「ドント・アスク、ドント・テル」を撤回するのは間違っている、と主張。

1月に共和党が下院の過半数を握り、上院でも民主党の影響力が低下する前に、なんとかこの撤回法案を通過させたことは、民主党の大きな実績となりました。Facebookでも、今日は私の「友達」の大勢がこのニュースについての投稿をして大喜びしています。