2013年5月25日土曜日

予選2日目

予選2日目、今日も朝から晩までエキサイティングな演奏に浸った一日でした。

2日間で18人の演奏を聴いた現時点での私の評価は、今日の最後に演奏したAlessandro Deljavanが断然トップ。彼の演奏が終わって45分ほどたった今でも、興奮さめやらず、頭のなかで演奏を反芻し続けている状態です。Deljavanは、前回2009年のコンクールにも参加したイタリアのピアニスト。前回も私は彼の演奏は素晴らしいと思い、とくに室内楽がよくて、彼は本選まで残ると思っていたのですが、準本選どまりでした。で、彼の演奏をまた聴くのを楽しみにしてはいたのですが、今日のコンサートはそんな期待を大きく大きく上回る、鳥肌がたち本当にワクワクする演奏でした。演目は、バッハのパルティータ第5番とショパンのエチュード作品25全曲。バッハには、「芸術というものはこういうものだ」というこだわりが感じられ、「ずーっとこの人の演奏を聴いていたい」という気持ちにさせられましたが、なんといってもすごかったのがショパンのエチュード。第1番からして、「これがエチュードか」と思うような物語性がある。そして2番、3番と続くに、ああ、この人は各曲のなかでも、そして12曲全体を通しても、自分の物語を語っているんだ、と感じさせるのです。これがエチュードであるなんてことはまるで頭からなくなり、とにかく彼の世界に引き込まれる。ポリーニの演奏を彷彿とさせながら、ときに一般的な演奏とはずいぶんと変わった解釈を加え、アルトの声部を強く出したり和声を強調したりするのですが、奇をてらっているといった感じはまったくなく、すべてが有機的に物語を構成している。聴いていて、心から感動と興奮をおぼえる演奏で、今日最初のコンサートから12時間近くがたっているにもかかわらず、この人の演奏を聴いていられるならあと1時間でも2時間でも喜んでここに座っていたい、という気持ちになりました。彼の解釈や演奏はかなり個性的なので、こういうコンクールで1位になるタイプのものではないかもしれませんが、彼が準本選そして本選に行かなかったら、私は今後クライバーン・コンクールをボイコットするぞ、というような演奏でした。とにかく、コンクールの結果がどうであれ、彼はいい芸術家として生きていくはずだし、彼の演奏を聴くためなら私は今後もお金を払って遠いところまで出かけて行くぞ、と思いました。今日の彼の演奏を聴いただけでも、今回コンクールを観に来た甲斐があったと思わせてくれる素晴らしい演奏でした。ぜひぜひ見てみてください。

そして今日の演奏のなかでとてもよかったもうひとりが、阪田知樹くん。「くん」づけするのも失礼でしょうが、なにしろ彼は19歳で今回の参加者のなかで最年少。私は彼が秋に浜松のコンクールに出場したときの演奏を聴いていないのですが、そのときの演奏を聴いたある人物に言わせると、クライバーン・コンクール出場が決まったのはすばらしいけれど、入賞が期待できるほどの成熟さはまだないと思う、ということだったので、正直なところそれほど期待していなかったのですが、今日の演奏は、思わず「おお〜!」と声が出そうなよいものでした。いい意味で若さがある。前回のコンクールのときに、ハオチェン・チャンの演奏について、ある審査員が、「19歳の彼が、35歳や60歳の芸術家になったつもりの演奏をしているのではなく、自分自身の音楽を誠実に演奏しているところにこそ、彼の音楽家としての真摯で成熟した姿勢が表れている」と言っていましたが、今日の阪田くんの演奏にも私は同じことを感じました。まっすぐで、真摯で、そして、こわいものを知らない。ベートーベンの音色も、リストのダイナミックな技巧も素晴らしかったし、なにしろ最後のスクリアビンのソナタ第5番の彩りの豊かさがよかった。昨日と合わせても、彼は私のなかでトップ3入りです。予選の2回目のコンサートでは、私が最近勉強しているアルベニスの曲が演奏されるらしいので、今から楽しみです。

その他には、イタリア勢のもうひとりのAlessandro Tavernaも、個性と正統性がいい具合に合わさったとてもいい演奏でした。また、各地のコンクールで入賞して注目を浴びている20歳(顔は12歳くらいに見える)のロシアのピアニスト、Nikolay Khozyainovの演奏。彼のハイドンは、「ハイドンが自分の曲を思う通りに弾いたらこういう演奏になるんだろう」と思うような絶妙な演奏で、何千人もの聴衆が集まる大きなホールであるにもかかわらず、自分ひとりのためだけに語りかけてくれているような親密さがあり、思わずため息が出ました。が、コンサート後半は、ちょっと疲れが出たような、いまひとつ切れとパワーが欠けた印象。そのほか、ロシアそしてウクライナのピアニストたちの演奏があり、それぞれとくに非のつけどころはなかったけれど、とりわけ感動を覚えたかというと、私はそれほどでもなし、という感じでした。

明日もまたまる一日予選なので、そろそろ寝ますが、昨日は頭のなかに音がいっぱいでなかなか眠りにつけなかったので、最後にDeljavanを聴いてしまった今日は、ますます眠れないかもしれません。。。

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