2010年6月10日木曜日

スウェーデンの育児休暇

今日のニューヨーク・タイムズで、「もっともメールされている記事」の上位に挙がっているのが、スウェーデンの育児休暇についての長文記事。

日本でも、一昔前と比べると、保育園の送迎をお父さんがしていたり、休日に街で小さな子供を連れている男性の姿を見ることが増えました(私の印象では、私が住んでいる郊外よりも都心でのほうがそうした姿を見ることが多いような気がしますが、これは都心のほうが共働きの夫婦が多いからでしょうか)。それでも、日常的な育児にかかわる時間は男女のあいだに非常に大きな差があるのは明らかですし、法律は整備されていても育児休暇をとったという男性は私の周りにはひとりもいません。アメリカでは、家族形態も労働形態もジェンダーにかんする意識もかなり違うので、ごくおおまかに比べれば、職種や立場が同類の男性同士を比べると、アメリカのほうがずいぶんと育児にかかわる度合いが高いですが、産休や育児休暇などの法制化や公的な保育施設の整備などにおいては、むしろ日本より遅れているくらいなので、私の周りでも、出産した翌週には教壇に立つ女性などもいます。なにしろ、この記事がこれだけ注目を浴びているということ自体が、「スウェーデンはこんなに進んでいる」というアメリカ読者の驚きを表しているのではないでしょうか。

この記事によると、人口900万人のスウェーデンでは、経済が急成長した1960年代に労働市場に女性を送り込むためのさまざまな政策をとり、ヨーロッパのなかでもとくに女性が働きやすい仕組みが整備されてきたものの、1991年までは、法的には育児休暇が整備されていたにもかかわらず、実際に育児休暇を取る男性は全体の6%にとどまっていた。社会における男女の平等は、まず家庭のなかでの男女の平等がなければ実現しないとして、父親がより育児にかかわり、また母親が働きやすくするよう、1995年には、子どもひとりにつき一夫婦に13ヶ月与えられる育児休暇のうち1ヶ月は男性が使わなければそのぶんは取り上げられる、という仕組みにしたそうです。つまり、男性が育児休暇を取ることを義務づけられているわけではないけれども、取らなければ夫婦が損をする、ということになったわけです。その後、この父親専用にあてがわれた1ヶ月の育児休暇は2ヶ月にまで延ばされ、その結果、現在では父親の85%が育児休暇を取っている、とのことです。現行制度では、収入や職場復帰が保証された390日間の育児休暇は、子どもが8歳になるまで、夫婦がどのように分散させてとってもよく、1日や1週間単位、ときには時間単位でとることもできるそうです。こうして子どもが幼い時期に父親が長時間育児にかかわることによって、とうぜん親子関係や夫婦関係、「男らしさ」観にもかなりの変化があらわれ、そして、男女ともに働きやすい社会づくりが進む、というのは納得がいきます。スウェーデンのような、人口が小さく税率の高い社会福祉国家だからこそ可能な仕組み、ということもできますが、この記事によると、ドイツでも同様のモデルを使って、14ヶ月の育児休暇のうち2ヶ月は男性専用としたところ、育児休暇を取る男性は3%から20%に増加しtそうです。

私は子どもも夫もいませんが、日本でもハワイでも周りは子育てをしている男女ばかりですし、ハワイの女性の友達はみな専門職につきながら複数の子どもを育てているので、家庭と仕事の両立や子育てについてはいろいろ考えます。日本でも最近はライフワークバランスなどという言葉をよく聞くようになったものの、職場では平気で夕方の6時とか7時とかから会議が始まったり、どう考えても家族(子どもに限らず、要介護の親など)の存在を無視した前提で職場の日常が作られていることが多いようです(私は今も正規に「日本の職場」に所属していないので、人から聞く話での印象です)し、政権変われど相変わらず女性閣僚は2人しかいないしで、この点においては前途は長いなあと感じます。とにもかくにも男性がみな数カ月家にいて育児に専念してみれば、それが実際にどういうことを意味するのかわかるので、職場復帰したときにも家庭と仕事の両立をしやすい意思決定をすることになると思うのですがねえ。