ハワイ大学アメリカ研究学部教授、吉原真里のブログです。『ドット・コム・ラヴァーズーーネットで出会うアメリカの女と男』(中公新書、2008年)刊行を機に、アメリカのインターネット文化や恋愛・結婚・人間関係、また、大学での仕事、ハワイでの生活、そしてアメリカ文化・社会一般についての話題を掲載することを目的に始めました。諸般の事情により、2014年春から2年半ほど投稿を中止していましたが、ドナルド•トランプ氏の大統領選当選の衝撃で長い冬眠より覚め、ブログを再開することにしました。
2009年5月12日火曜日
ミニ・リサイタル
最近ブログの投稿が少なかったのは、先日10日のピアノのミニ・リサイタルに向けて、せっせと練習に励んでいたからです。私はここ数年のあいだに何回か、同じようなミニ・リサイタルをしたことがあるのですが、そのときは友達を十数人集めて自宅の電子ピアノで演奏するという文字通りのホームコンサートだったのに対し、今回はちょっと本格的に、音楽家組合の建物のなかにあるホールを借りて、ちゃんとしたコンサートグランドでの演奏でした。誰にやれと言われたわけでもないのにわざわざこういうものを企画するのは、こうした具体的な目標がないとなかなか体系的に練習をしないからで、自分の腕と精神を磨くためですが、今回こんな大げさな設定にしたのは、ここ一年間練習を積んできた曲(以前の投稿でも言及した、バッハ=ブゾーニのシャコンヌ)が、ちゃんとグランドピアノで弾いてあげないといけないような曲だからです。学期末で仕事が忙しいさなかにこんなものを企画してしまったので準備のストレスにも輪がかかって、当日にいたるまでの一週間ほどは、眠っているときも夢に曲の一節が繰り返し出てきたり、演奏で大失敗をして曲の途中でぱったりと手が止まってしまう悪夢をみたりという始末でした。それでも、リサイタルといっても、演奏自体は30分強のあくまで「ミニ」リサイタルなので、とにかく来てくれた人たちに楽しんでもらおうと、演奏の前にはワインとおつまみのパーティ、プログラムの最中は、曲と曲のあいだに私のまったくの独断の曲の解説やなぜこの曲が私にとって意味を持つかといったおしゃべりをたくさん入れて、普通の「リサイタル」とはずいぶん違う雰囲気のイベントにしました。プロの演奏会ならともかく、私のような人間のミニ・リサイタルでは、とにかく音楽を通じて友達と普段とは違う意味のある時間を共有するということが第一目的なので、こうした形式はとてもよかったと思っています。予想以上にたくさんの人たちが来てくれて、しかもそのうち三分の一くらいは、ホノルル・シンフォニーのメンバーやプロのピアニストなどの本物の音楽家だったので、おおいにビビりました(自分から招待しておいてビビるのも変ですが、アマチュアのミニ・リサイタルにわざわざ来てくれるというその優しさに心打たれます。三ヶ月もお給料なしで働いているホノルル・シンフォニーのために最近私がせっせと寄付金集めに励んでいるので、感謝の気持ちもあって来てくれたのかも知れません)。演奏自体は、自分の実力のまあ75%くらいというところでしたが、人前での演奏という状況は、普段の練習やレッスンとはまったく違ったもので、学ぶことがとても多かったです。とにもかくにも、来てくれた人たちがそれなりに楽しんでくれたようなので、やってよかったとひとまず満足。また、苦労したシャコンヌについて、みんなが「あの曲はものすごいパワーだった!」と言ってくれたので、一安心。やれやれです。今週は学年末の週で、試験の採点だのなんだのいろいろあるので、再び仕事に集中します。