ハワイ大学アメリカ研究学部教授、吉原真里のブログです。『ドット・コム・ラヴァーズーーネットで出会うアメリカの女と男』(中公新書、2008年)刊行を機に、アメリカのインターネット文化や恋愛・結婚・人間関係、また、大学での仕事、ハワイでの生活、そしてアメリカ文化・社会一般についての話題を掲載することを目的に始めました。諸般の事情により、2014年春から2年半ほど投稿を中止していましたが、ドナルド•トランプ氏の大統領選当選の衝撃で長い冬眠より覚め、ブログを再開することにしました。
2009年5月31日日曜日
辻井伸行さんファイナルに進出
今日の演奏が終わり、6人のファイナリストがつい1時間ほど前に発表になったところです。辻井伸行さんもその6人のうちに入りました。辻井さんご本人とお母様、ホストファミリーの夫妻と一緒に興奮を分かち合って帰ってきたところです。
今日の午後の辻井さんのリサイタルは、課題の現代曲のほかはベートーベンのソナタ「ハンマークラヴィア」だけという大胆なプログラムでした。いやー、すごかった。この曲はベートーベンの数多くのソナタのなかでももっとも難しい作品で、リズムや色彩がどんどん変わったりするので、もちろん弾くのもとても困難ですが、曲のつくりを理解するのも難解で、聴くほうも座って気楽に聴いていられるようなものではありません。私は、隣の席のおじさん(これについてはまた後ほど書きますが、毎日通っていると、近くの席の人たちとすっかり仲良くなるのです)がもってきた楽譜を見ながら演奏を追っていましたが、なんと難解な曲なんだろうという思いを脱すると、辻井さんの音の輝きや暗さや怒濤や静けさが次々におそってくるので、45分ほどの演奏じゅう、ずっと息を呑んでいる状態でした。あー、すごかった。私自身をふくめ、聴衆は辻井さんの演奏を聴くのは室内楽も含めるとこれで3回目なので、「目が不自由な人がこんなに弾けるなんて」という思いはさすがに次第に忘れて、それよりなにより辻井さんの生み出す音楽の力に心動かされます。またしても、ホール全員総立ちブラボー。彼がファイナルに進むことは皆が予想していたことだと思います。
こうなったら、日本の新聞やテレビ局もぜひ取材にフォートワースにやってくるべきだと思います。
6人のうち、5人については私の予想が当たっていました。私のたいへんお気に入りであるHaochen Zhang, そしてDi Wu, Yeol Eum Sonが入ったのでとても嬉しいです。6人のフィアナリストのうち4人がアジア人というのも、Musicians from a Different Shoreの売り上げにつながってくれればいいのですが(笑)。
他にもたくさん書きたいことがありますが、長い一日で疲労困憊したので、今日はここでおしまいにします。