コンクールのために準備している予選から本選までの全曲を演奏して約1時間。普通のコンサートと比べると半分から三分の二くらいの長さなので「ミニ」をつけましたが、私としては、これだけのレパートリーを人前で弾けるくらいのレベルに持って行くだけでもかなり大変で、今年度がサバティカルでなければできなかったのは間違いなし。今回の聴衆は40名弱で、ほとんどが私の友達や親族だったので、審査員と何百人もの聴衆を前にしての演奏とは訳が違うものの、「本番」というものの経験がほとんどない私にとっては、これでもかなり緊張します。人前で演奏するとなると、家で練習しているときには絶対にしないようなミスが出たりして、大満足というには程遠い演奏だったものの、それなりに気持ちよく弾くことができ、いろいろとちょっとしたミスがあっても大パニックに陥ったり途中で頭が真っ白になったりすることがなかった(けっこうわかりやすいミスをした箇所では、立派にごまかしてなにごともなかったかのように進んでいったので、その回復ぶりに自分で感心:))ので、そういう意味では合格点。本番のようなものをやることで、自分にとっても発見が多くて勉強になりました。なんといっても、メンタルコントロールが重要。一時間のコンサートだと、弾いているうちにだんだんと集中力やノリが高まってくるのですが、コンクールの予選は12分間なので、「だんだんと」なんていっている間に終わってしまう。初めの第一音から最高のものを出せなければいけないのだけれど、それを邪魔するさまざまな雑念をどうコントロールするかが課題です。また、とんでもないことをやらかしてしまわないように、ひとつひとつの音を大事にして弾くように、と注意しながら弾いていると、そのときそのときの音を出す作業で頭がいっぱいになって、音と音のつながりや全体の流れまで気が回らなくなってしまったり、思い切りがいまいちになってしまったりする。などなど。
聴きにきてくれたかたたちはみな、「人柄や人間性がよく出ている演奏だった」とか「自分の音楽を聴いてもらおうという姿勢がよかった」とか言ってくださったので、そういう意味では私が求めていることが達成できたとも言えます。が、今回は聴衆が私のことを知っている人たち、つまり、私の人間性を重ね合わせながら私の演奏を聴いてくださる人たちだったから、そういうコメントがいただけましたが、私のことを知らないテキサスの聴衆やプロの音楽家である審査員たちが、はたして私の演奏からなにを感じ取るのかは不明。他人になにかを伝えられる演奏ができるかどうかが勝負。
というわけで、課題はいろいろと浮上しましたが、とにかく、自分の音楽性を表現するような、私らしい演奏をできることを目標に、本番でも頑張ります。火曜日に出発して5日間ピアノ・テキサスというワークショップに参加してからコンクールの本番にのぞみます。