2011年5月22日日曜日

新たなるピアノ体験さまざま

一昨日は、マスタークラスの後Harold Martina氏のプライベートレッスンを受け、夜はコンサートでバッハ=ブゾーニのシャコンヌを演奏。こちらは緊張しながらも実力相応の出来で、とにかく大きなホールでコンサート・グランド・ピアノでシャコンヌを弾くというのが夢だった私には、ごちゃごちゃとしたミスはともかくとして、気分のいい体験でした。

この日はコンサートの後、ワークショップを運営しているTamas Ungar氏が参加者全員を集め、自分たちの演奏についてなど話し合う時間を設けてくれました。緊張して手が震えたりつっかえたりどんどん演奏が速くなったりしてしまうという状態を皆が共有し、どうやってそれに対処するかということをお互い話し合ったのですが、話の内容自体はとくに大きな発見があるというわけではなくても、そういった気持ちをみんなで話し合うということには大きな意味がありました。グループのなかでも飛び抜けて上手な人というのが何人もいるのですが、そうした人たちも演奏経験の少ない私などと同じような気持ちでいるのだなということもわかるし、なんといっても、ここにいる仲間が、お互いがいい演奏ができるようにと応援しあっているということが、最大の心強さにつながり、話しているあいだに涙が出そうな気分になってきました。このグループのなかには、テキサスの医者やマサチューセッツの弁護士やニューヨークの建築家やブラジルの投資家やドイツの物理学者など、いろんな人がいるのですが、ふだんの仕事や生活とはまったく関係なく、ピアノへのこだわりで結ばれたこういうコミュニティというのがあるんだなあと、感じ入るところ多し。

昨日は、朝一番でRobert Roux氏のマスタークラスでバーバーを演奏。こちらの演奏はけっこうよい出来で、本番でああいうふうに演奏できれば自分としては満足だなあと思ったのですが、こういう演奏は本番以外のときにしかできないもの(苦笑)。マスタークラスの指導はこれまた素晴らしく、前日のレッスンに加えて、これだけでずいぶんと良くなった感触あり。

そして、昨晩のコンサートでは、初回の雪辱をはらすべく、再びバーバーを演奏。またしてもたいへん緊張しましたが、今回は前回とはまるで違った体験になりました。前回は、緊張しすぎて自分で音楽に入りきることができず、音が心配になって頭が先走り、テンポがどんどん速くなってコントロールを失うという状況でしたが、今回は、緊張しながらも音楽には入り込み、少々のミスはともかくとして気分良く演奏していたのですが、入り込みすぎて途中で音がわからなくなり、次の回復できるところまで流れを保つために複数の声部の入り組んだ箇所で右手の単線だけを弾くという大惨事に。にもかかわらず、残りも気分的には集中して演奏でき、一種の高揚感を味わいました。これがコンクール本番だったら、間違いなくこれでアウトですが、今回のワークショップに参加して他の出場者のレベルを見て、私が予選を通過する可能性はゼロであるということをじゅうぶん認識したので、私はもう上手に弾くことなど忘れて、気持ちよく自分らしい演奏をすることに集中することにしました。その点、昨日は演奏の後、何人もの人が、とてもよかったとか、私もあの曲を弾いてみたいから楽譜を見せてくれとか、弾いている本人がとても楽しそうに弾いているのを見て気分がよかったとか、曲の雰囲気がとても良く出ていたとか、いろいろ言ってくれたので、メモリースリップはまあよしとしましょう(と自分に甘い)。本番では、音楽に入り込み、かつ、形も整った演奏ができるとよいのですが...

それにしても、このワークショップに参加することで、自分の演奏についても、他の人の演奏についても、ピアノ指導のありかたについても、実にさまざまな発見をしています。ここにいる参加者は、技術的にもなにごとかと思うくらい長けているのだけれど、それ以上に、それぞれの思い入れが強く感じられる人間的な演奏をします。その人たちと友達になり、彼らの人生を少しずつ知るにつれ、そのピアノへの思いにますます感動。自分自身の音楽への愛情もいっそう深められている気持ちがします。

さて、ワークショップは本日で終了し、今日はいよいよコンクール参加者のためのディナーパーティがあります。その後で、最後の一回の練習演奏をして、明日の本番に臨みます。

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