2011年5月22日日曜日

コンクール本番前夜

いよいよ明日からコンクールの本番が始まります。出場者が次々と集まってきて、今日はフォート・ワース名物の大きなメキシコ料理レストランでウェルカム・ディナーがありました。さすがクライバーン財団、温かくいい雰囲気の集まり。世界のいろいろなところからやってくる、実にさまざまな職業の人たちと会うのは、単純に面白いです。自分が弾かなくてよくて、取材するだけだったら、もっと気が楽だけれど、緊張や恐怖や興奮を共有することで生まれる絆というものもあるのでまあよしとしましょう。

フォート・ワースの地元新聞は、コンクールのことを大きく取り上げ、何人かの出場者のプロフィール紹介もしています。2009年のプロのコンクールのときに、地元メディアが総力で取材をしているのにいたく感心しましたが、アマチュア・コンクールにこれだけの紙面を割くというのも驚き。こうした姿勢が、地域コミュニティの芸術支援の血となり肉となっているのだと思います。

ピアノ・テキサスのワークショップのミニ・セッションは今日で終了。最後のコンサートでびしっと決めて明日に備えようと思っていたのですが、緊張しすぎてまるで納得のいかないできばえとなってしまいました。でも、ワークショップの運営者であるTamas Ungar先生が、この5日間で全員が大きく成長したこと、コンクールでは余計なことを考えずとにかく自分の音楽をすること、と、とても心に響く言葉をくださり、それだけで私は胸がいっぱい、涙が出そうでした。この5日間でできた、音楽への愛情とピアノへの思い入れを共有する仲間たちが、お互いを応援して演奏を楽しみにしていると思うと、それだけで私はもうじゅうぶん、という気分。

私の出番は、テキサス時間の明日23日の一番最後、夜10:15からです。私の直前に演奏するのは、ベルリンのアマチュア・コンクールで優勝してベルリン・フィルと共演したという、Jun Fujimotoという日系カナダ人。彼もワークショップに出ているので、何度も演奏を聴きましたが、私なぞとはまるで異次元の腕前。そんな人の直後、しかも初日の最後でみんなが疲れているときに弾くと思うと、嫌で嫌でたまらないのですが、そんなことを言っても始まらない。Junとはさっき一緒に飲みに行って仲良くなったので、それでずいぶんと気が楽になりました。上手い下手などということは一切ふっ切って、音楽を楽しめたらと思っています。見られていると思うとますます緊張するのであまりこの事実を広めたくないのですが、演奏はすべてネット上で生中継されるそうです。