2009年1月10日土曜日

Cleve Jones

今朝、私のqueer familyであるゲイの友達(『ドット・コム・ラヴァーズ』に出てくる「ジェイソン」と「マイク」)にくっついて、Family Equality Coalition Hawai'iという団体が主催する集会に行ってきました。この団体は、ハワイでLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の人々が結婚をめぐって異性愛者と同じ権利を確保するための立法を目指す団体で、1990年代以来ハワイでは下火になっていた運動を再興するべく二年前に結成されました。今日の集会で基調講演をしたのが、クリーヴ・ジョーンズ。ジョーンズ氏は、1954年生まれの活動家で、1970年代にサンフランシスコのカストロ地区でハーヴィ・ミルクと出会って以来、ミルクの選挙キャンペーンの重要な一員となり、ミルク当選後はインターンとして働きました。以前に言及した、ショーン・ペン主演の映画『MILK』にも、若かりし日のジョーンズ氏が出てきます。(ジョーンズの役を演じるのは、エミール・ハーシュ。)その後、カリフォルニア州議員の立法コンサルタントとして仕事をするほか、青少年犯罪や精神医療に関わる活動をしましたが、彼の活動のなかでもっとも注目を浴びたのは、エイズ・メモリアル・キルトです。1985年に、エイズで亡くなった親友を弔い、エイズ問題に関心を呼びかけるために、ジョーンズ氏が一枚のキルト布を作ることから始めたこのプロジェクトは、以後世界中から集まった五万枚の布を縫い合わせた大プロジェクトになり、エイズの危機そしてエイズ患者の権利保護について世間の関心を喚起することに大きなインパクトを与えました。現在、ジョーンズ氏は、ホテルやレストランの従業員のための労働組合であるUNITE HEREの活動家として、LGBTの人々と労働組合の連帯を強めるためのさまざまな活動をしています。

このブログで何度も言及しているカリフォルニア州でProposition 8が通過してしまったのは、選挙前にLGBTが組織だった運動に十分な時間・資金・労力を注がず、また、アフリカ系アメリカ人やラテン系アメリカ人のコミュニティとの連帯を育む努力をじゅうぶんにしなかったからだ、という反省から、同性婚またはシヴィル・ユニオンのための立法を実現させるためには、労働組合などの組織を通して他の地元コミュニティとのつながりを強化させることが肝要だ、と強調していました。現在、カリフォルニアやハワイなどで労働組合員のベースの多くはカトリックの移民であることから、そうしたコミュニティとの連帯を作るためには労働組合が有効な組織となるためです。また、最近の政治活動・社会運動のキャンペーンは、多額の資金を投入してカリスマ性のある有名人を看板に使ったメディア・アピールや、その資金を集めるための派手なディナーパーティなどに集中しがちだけれど、実際に立法につながる運動を成功させるためには、そういうことの他に、政治活動のスキルと経験のあるフルタイムの活動スタッフを何人も雇えるだけの資金と、多数のボランティアがそれぞれの選挙区で個人の家を一戸一戸たずねて立法の必要性をアピールする、とてつもない時間と労力と忍耐力を必要とする草の根運動が欠かせない、ということを説いていました。とてもダイナミックで、かつユーモアと愛情に溢れる講演でした。

今年度のハワイ州議会下院にこの立法案を提出する州議員もこの集会に参加し、立法実現のためのステップや、支援者がこれからしなければならないことなどについて説明し、具体的・実際的な話もあって効果的な集会だと思いましたが、この先どれだけ運動がもりあがっていくかは不明です。ハワイは、さまざまな法律に関してはかなり進歩的な州なのですが、文化・社会通念的には相当保守的な側面も強く、ローカル(ハワイにおける「ローカル」アイデンティティの意味に関しては、『ドット・コム・ラヴァーズ』159−162頁を参照してください)のゲイ・レズビアンの人々の多くは、家族や同僚には自分がゲイであることを隠している、いわゆるclosetedな人が多く、表立って同性愛者の権利を叫ぶ運動に積極的に参加するような人は限られているのです。また、今日の集会に参加した人は私が見渡した限りでは約100ー120人くらいでしたが、その三分の二以上が白人のゲイ男性で、他のコミュニティとの連帯を作るという課題の大きさをまさに物語っていました。この先どうなるか、支援しながら見守っていきたいと思います。